医療法人 蒼龍会

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VRE(バンコマイシン耐性腸球菌)
 

井上病院におけるVRE複数保菌者の判明と今後の対応について

 

1.概要

 平成29年4月10日にIVH(中心静脈栄養)カテーテル刺入部の浸出液の培養からVRE(バンコマイシン耐性腸球菌)が検出され、同日に吹田保健所に対応を相談しました。患者さまはIVHカテーテルの抜去により、改善しました。
 保健所から同室者への拡大の有無を調査するために便培養を実施するようにとの指示を頂きました。腸球菌は腸内の常在菌であり、通常の便培養では感受性検査が実施されず、VREであることは分かりませんが、今回はVREの検出を目的とした検査を実施しました。
 また、4月13日、尿路感染症治療中に尿培養からVREを検出し、感染症法の届出義務に従い、吹田保健所に届出いたしました。その後の院内の調査にてVREが複数の方から検出されたため、平成29年4月24日に吹田保健所および大阪市立大学臨床感染制御学教室教授等、外部の有識者を交え感染対策の取組み状況を共有しつつ連携を図るための、第1回VRE対策会議を開催しました。有識者の意見を参考に、入院されている全ての患者さまに対してVREの検査を実施し、下記の検査結果となりました。

 平成29年5月11日までに入院患者118名にVRE検査を実施した結果、41名からVREが検出されました。検出された患者さまは、すべて感染症を発症しておられず保菌状態と考えられ、治療が必要な方はいませんでした。
 その後、保菌検査を定期的に実施しており、平成29年6月23日現在、8名の方が入院中ですが、すべて保菌状態で、原疾患の治療目的で継続入院となっています。

 実施した遺伝子検査にて、一部の株は遺伝子型が一致したことから院内伝播の可能性があり、現在その原因究明および感染対策の充実を図っており、また地域全体への注意が必要と判断し、当院HPにて報告公表いたします。
  

 

2.VREとは

 VRE(バンコマイシン耐性腸球菌:Vancomycin-resistant Enterococcus)とは、腸球菌は、もともと人間の腸内に一般的に存在し、消化吸収を助けてくれる細菌ですが、バンコマイシン(抗生物質)に対し薬剤耐性を獲得したものをVREと言います。VREは、薬剤耐性である点を除けば他の腸球菌と同じで、腸内では病気を起こすことはありません。
 VREは外部から体内に入り込み知らない間に腸の中に住み着いてしまうことが知られています。この状態を保菌といいます。一方で、様々な病気で抵抗力が落ちている時に保菌した場合は、尿路感染症や胆嚢炎、手術部位感染症、敗血症などの感染症を発症することがあります。VREは、ヒト同士の接触、ヒトと汚染されたモノの接触によって広がっていきます。そのため医療機関においては、患者さんの手や医療従事者の手、医療環境や医療器具を介して広がりやすいため、VREの広がりを防ぐ対策が必要となります。 

 

3.遺伝子検査の結果

 大阪健康安全基盤研究所に依頼し、VRE保菌者のうち、25検体の遺伝子検査を実施しました。結果は13種類の遺伝子型に分類されました。遺伝子の相同性の検討から一部の株の院内伝播の可能性が確認されています。一方で、相同性が確認できない菌株もあり、現在、国立感染症研究所へ、さらに詳細な分析を依頼中です。

 

4.感染対策について

 
①手指衛生の徹底

 ・井上病院感染対策チーム(ICT)及び病棟看護師長、医師等が週2回全病棟をラウンドし、
  
手指衛生の実施状況を確認し指導を行っています。
 ・携帯用アルコール手指消毒薬、設置型アルコール手指消毒薬の使用を再度徹底し、
  
手指衛生の更なる強化を図ります。
 ・入院患者さんの毎食前手指消毒及びテーブル等周辺環境消毒を実施しています。
 ・院内の主たる手洗い場に関し、手洗い石鹸をノータッチ式ディスペンサー(手を差し出すと
  
石鹸液が自動的に適量噴出する)に変更しました。

 
②個人防護具の適正使用

 患者ケア時における個人防護具(手袋・マスク・エプロンなど)の適正使用と、正しい着脱方法の教育および実践を徹底しています。

 
③環境清掃の強化

 院内全体における環境消毒の強化を図っています。
 具体的には、トイレ、洗面、ドアノブ、手すり、ベッド柵、オーバーテーブルなどの、接触頻度の高い部分の環境消毒を1日2回徹底して行っています。

 
④井上病院VRE対策会議の実施

 吹田保健所長、吹田保健所保健師長、保健所感染担当リーダー、大阪市立大学臨床感染制御学教室教授、大阪市立大学感染認定看護師、千船病院感染認定看護師、高槻病院感染認定看護師等に外部委員をお願いし、VRE対策会議を平成29年4月24日に開催しました。今後も継続して開催します。

 
⑤職員教育と情報共有

 ・年2回全職員に対して感染対策医師(ICD)、感染対策看護師(ICN)を中心に
  
研修会を実施しており、今回は臨時で全体研修を開催し、感染防止対策の再確認を行っています。
 ・院内報・イントラネットでの啓発、全体集会・医局会・看護師長会や
各運営会議で
  
情報の共有に努めています。

 
⑥抗菌薬適正使用の強化

 院内における抗菌薬の適正使用の強化を図り、耐性菌の蔓延を防いでいます。
 具体的には、毎週ICTメンバーが抗MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)抗菌薬を含むすべての抗菌薬の使用状況をチェックし、当日病院長から医局会で医師へ啓発することにより、適正使用を継続します。

 
⑦外部有識者からの指導・助言

 今後も継続して、吹田保健所、大阪市立大学等の外部有識者と感染対策実施状況を共有し、指導・助言を受けながら対策を講じていきます。

 

5.環境培養の結果

 上記の対策を実施した上で、井上病院の病棟、透析棟、一般外来等の350箇所について環境培養を実施しました。培養を実施した具体的な場所は、トイレ、洗面、手すり、ベッド柵、ドアノブ等、患者さまが頻繁に手に触れる場所を中心に実施しました。
 
その結果、すべての場所からVRE菌は検出されませんでした。今後も継続できるよう、環境清掃を徹底してまいります。

 

6.今後の対応

 当院では今後とも状況把握に努めるとともに、引き続き、病院職員一同、感染対策を徹底してまいります。
 また、今後も吹田保健所や大阪市立大学と連携し、ご指導いただきながら、終息に向けて取り組んでまいります。また、さらなる原因解析のために、国立感染症研究所への支援依頼も検討しています。

 経過については、地域の皆さまに安心していただくために、井上病院のホームページにおいて随時報告いたします。





平成29年6月26日

蒼龍会井上病院 病院長 辻本 吉広